脊椎は、重たい頭を支えるために、適度なS字カーブを描いています。これを脊椎の生理的湾曲(S字カーブ)と言います。
直立して生活をしている人間にとって、この生理的カーブは大切な役割を担っています。
重力を分散するサスペンションの役割をし、重たい頭を支えるための筋肉の負担を和らげているのです。
ですから、なんらかの原因で生理的カーブが崩れると、分散がうまくいかずに一点に負担がかかるようになります。
生理的カーブの崩れは、湾曲が強くなる場合と、湾曲が少なくなる場合があります。
湾曲が強い場合は、猫背やお腹が前に出るような姿勢になります。
仰向けに寝たときに、腰と床の間に隙間が出来るのも、湾曲が強い場合です。
湾曲が少ない場合は、背中が真っ直ぐになり、一見姿勢が良いように見えますが、これも正常からははずれた形です。
どちらの場合も、クッションの役割が弱くなるので、筋肉の負担が大きくなり、長期間にわたると骨が変形したり、様々な症状が出てきます。
生理的湾曲(S字カーブ)の乱れと症状
S字カーブが崩れたときの代表的な症例は、ストレートネックと猫背です。
- ストレートネック・・・・頸椎の前湾が少ない状態
- 猫背(円背)・・・・胸椎の後湾が強い状態
脊椎の生理的湾曲(S字カーブ)
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耳の穴、 肩関節、 大腿骨大転子、 外果(くるぶし) これらが一直線に並ぶのが、正しい姿勢です。 |
アゴが前に突き出し、背中が丸くなり(後湾)、腰が前に出ます(前湾)。 一般的に言う、猫背姿勢です。 |
アゴを引き、胸を張った姿勢。平背(へいはい)やフラットバックと呼ばれます。 一見姿勢が良く見えますが、筋肉の負担が大きいです。 |
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生理的湾曲と腰部
脊柱は、上半身のクッションの役割をするためにS字カーブを描いているのですが、その中でも重要なのが、腰椎と仙骨が接する部分に適度な角度がついていることです。
この角度によって、理論上体重の約3倍の重力が加わるはずの仙骨部分の力が、分散吸収されるのです。
この微妙な角度があるから、人間は直立していられるわけです。
しかし、生理的湾曲が崩れると、この角度にも影響が出て重力をうまく分散吸収できなくなってしまいます。
筋肉ががんばって体を支えようとするために、疲労が溜まります。
疲労が溜まった筋肉が炎症を起こすと腰痛や背中痛などの症状が出たり、これが長い間続くと、更に骨や筋肉への負担が増し、椎間板ヘルニアなどが発症します。
横の歪みと縦の歪み
上記で説明した、生理的S字カーブは、体を横から見たときのカーブです。
真正面から見たときは、通常、体は左右対称になっていて、もちろん脊柱は真ん中に真っ直ぐあります。
しかし、何らかの原因で、生理的S字カーブが崩れてしまっている方は、ほとんどの場合、左右の歪みも併せて起こっています。
逆に、左右に歪みがある方は、生理的S字カーブも歪んでいます。
- 側湾症は、正面から見たときに、脊柱がS字に湾曲していますが、併せて捻れも加わっており、横から見たときの生理的S字カーブも崩れています。猫背か、平背のどちらかです。
- ストレートネックの人は、生理的S字カーブの歪みの影響で、頚椎の湾曲が少なくなってしまった状態ですが、症状のある人は必ず左右の歪みも生じています。
ですから、体の歪みは、縦か横どちらかが歪んでいるとか、骨盤だけが歪んでいるとかではなく、どこかの一部が歪んでいるということは体全身が歪んでいるということなのです。