猫背とは
猫背は、脊柱後湾症や、円背(えんばい)とも言います。
ただ外見だけの問題だとか、自分で胸を張るように気を付けていれば何とかなると思っている人が多いですが、全身が歪んでいる状態ですので、軽く考えてはいけません。
脊柱は、横から見ると、真っ直ぐではなく、適度にカーブしています。(生理的湾曲)
重い頭を支えるためのサスペンションの役目をしているのです。
この生理的湾曲が崩れると猫背になります。
反り腰体型と、猫背体型がありますが、どちらも脊柱の生理的湾曲が崩れ、全身が歪んでいる状態です。
S字カーブが乱れ、頭部が前に出て(首猫背)背中が丸くなります。
サスペンションの役目は果たさなくなり、いろいろな所に不調が現れます。
猫背の人の楽な姿勢
骨盤が後傾している猫背の人の「楽な姿勢」は、椅子に浅く腰掛け、背中が丸まった状態です。
この悪い姿勢が身に付いてしまうと、きちんと深く座ったとき、背中や骨盤の周辺に緊張が走り、疲れるようになるのです。
また、骨盤が前傾している「反り腰」タイプの猫背の場合は、うつ伏せに寝転んで本を読んだりスマホをしたりする人が多いです。
本来なら、この姿勢はとてもつらいはずなのですが、それが楽だという事は、脊柱がそのように不自然なカーブになってしまっているからです。
猫背の主な原因
脊柱起立筋や大腰筋など、脊柱を正しい形に保つインナーマッスルが弱くなると猫背になります。年齢とともに筋力が落ちるとだんだん猫背になっていきますよね。
しかし、最近では、若い人の猫背も多いのです。
デスクワークの人に多い
猫背の方は、仕事で一日の大半の時間をデスクワークで、特にパソコンを利用している方に多いです。
イスに浅く腰掛け、パソコンの画面を見るために顔を突き出した姿勢は、まさに猫背そのものです。
長時間、不自然な姿勢を続けているために、筋肉のバランスが崩れ、猫背がひどくなっていきます。
本来、筋肉のバランスは、体を動かすことによってリセットされるのですが、仕事が忙しくて運動する時間がない、運動するよりもゲームやテレビを見ている方が好き、など体を動かすことが少ないと、筋肉のバランスはどんどん崩れていきます。
子供の猫背
生活様式の変化とともに、子どもの猫背が増えています。
赤ちゃんの頃にぞんぶんにハイハイしたり体を自由に動かすスペースが無かったり、子供の外遊びが減った事などにより、股関節の形成や筋力が十分に発達しないことが原因の一つだと考えられます。
また、小さなころからゲームやパソコンなどを使う機会が増え、猫背を助長する生活習慣も大きな要因の一つです。
猫背のチェック
- パソコン作業を長くしていることが多い
- イスに深く座ると疲れる(猫背タイプ)
- うつぶせで上体を起こした姿勢で本を読んだりゲームをすることがよくある。(反り腰タイプ)
- 常に首が張っている(こっている)
- 姿勢が悪いと言われる
- 自分より背の低い人と一緒にいることが多い
- 背が高いのが嫌だと思っている
- 寝るとき、高い枕を好む
- 運動をあまりしない
- たすきがけが出来ない(背中に上下から手を回して、左右の手をつなぐ)
- 股関節が硬い(股が開かない)
- 歩くとき、足をひきずるように歩く
- 長い間立っていられない (朝礼の時など)
- お腹を壊しやすい
- 胃が弱い(逆流性食道炎)
- 風邪を引きやすい
- 気管支喘息がある
- ストレートネックだと言われた
主な猫背の症状
主な自覚症状は、肩こり・首コリ・頭痛・胃の不調などです。
しかし、猫背は全身の歪みですから、自覚症状がなくても、次のような不調が現れます。
- 首の前湾が強くなり、顎や首が前に出っぱり、ストレートネックになります。
- 肩が前にすぼまり、横隔膜が正常に機能できずに呼吸が浅くなります。
- 横隔膜が歪むことで、食道~胃に不調が出やすくなります。
- 鎖骨が下がることによって、肩こりや腕のシビレなどを起こす胸郭出口症候群になる可能性が高くなります。
- 腰痛が出たり、ギックリ腰を繰り返すうちに脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニヤに移行する場合があります。
- 骨盤の傾斜が悪く、腹圧が弱くなるので、内臓が下がってポッコリお腹になります。
- 骨盤が後傾している猫背タイプは、膝を曲げることでバランスを取るため膝への負担が増し、膝痛(変形性膝関節炎)になりやすくなります。
お子さんの場合は、
- 落ち着きが無く、じっとしていられない
- 長い時間立っていられない
- 集中力が無い
- 運動が苦手
- 気管支が弱い
などの症状がある事が多いです。
猫背と呼吸(横隔膜)の関係
猫背の人は、背中が丸まった状態ですので、肋骨や横隔膜の動きが悪くなり、下記のような症状が出ます。
呼吸が浅くなる
胸がすぼまっているので、肋骨の動きが制限され、呼吸が浅くなります。呼吸が浅いと、体が酸欠状態になり、頭痛や疲れが取れないなどの症状が出ます。
肺は自分では動かない臓器で、肺を動かしているのは横隔膜です。横隔膜が動く時、肋骨も一緒に動くのですが、猫背の人は、肋骨も横隔膜も上手く動かすことが出来ません。
深呼吸をするときは、「胸を大きく開いて~」とやりますよね。胸が縮んだままでは、大きな呼吸は出来ないのです。
肋骨がスムーズに動かないと、肩で呼吸する形になり、肩コリも起こります。
胃の調子が悪くなる
横隔膜には、大動脈・大静脈・食道が通っていますが、横隔膜が窮屈で歪んでいると、この大切な血管や食道にも影響が出てきます。
図のように、横隔膜が歪むと、食道がねじれます。それによって、食道と胃のつなぎ目がゆるくなり、胃酸が逆流して起こる「逆流性食道炎」を起こしやすくなります。
また、胃の一部が横隔膜の上部にはみ出してしまう「食道裂孔ヘルニア」を起こす場合もあります。