姿勢が悪いとは
姿勢が悪い人、と聞くと、どんな体形を思い浮かべますか?
猫背や、首が前に出ている人が浮かぶと思います。
では、姿勢の良い人は、どうでしょうか?
背筋がピンと伸びていて、顎が引けている人を想像しますよね。
この違いは、脊柱の生理的湾曲(S字カーブ)が正しいかどうかです。
生理的湾曲が崩れると、姿勢が悪くなるのはもちろんですが、重い頭を支えるためのクッションの役割がきちんと果たせなくなり、体のあちこちに不自然な負担がかかります。
姿勢が悪いのは、見た目の問題だけでなく、体にも悪いという事です。
姿勢が悪いのは生まれつき?
小さいころから姿勢が悪い(猫背だ)と、『これはもう生まれつきだからしょうがない』と思いがちですが…生まれつきの猫背なんてないんです。
だって、赤ちゃんの頃は、背骨のS字カーブはまだでき上がっていないんですから。
首が座って、お座りが出来るようになり、ハイハイ、つかまり立ち、という過程を踏んで、背骨の生理的湾曲ができ上がって行くのですが、その過程で何らかの問題があると、生理的湾曲が正しく形成されず、姿勢の悪い子どもになってしまう可能性はあります。
しかし、その何らかの問題というのも、歩行器を多用していたとか、ハイハイを存分にするスペースが無かったなど、股関節の形成や骨盤が安定する力が十分につかなかったという要因であり、先天性の骨などの異常というものは本当に稀です。
そして、実際には、せっかくきちんとしたS字カーブができ上がったのに、普段の生活習慣で歪んでしまう場合がほとんどです。
親が猫背だと子どもも猫背になる場合が多いので、やっぱり生まれつきとか、遺伝だとか思ってしまいますが、それよりも生活環境の影響の方が大きいと考えます。
親と同じ生活習慣が、親と同じ体型を作るのです。
年齢とともに姿勢が悪くなるのは
ほとんどの人は、年齢とともに姿勢が悪くなっていきます。
それは、姿勢(脊柱の生理的湾曲)を維持する筋肉が衰えるからです。
人間は、重力に逆らって直立しています。ですから、筋力が足りないと、重力に負けて、下に下に行こうとします。
重い頭を支えるバネの役割をしている脊柱も、それを支える筋力が衰えると、張りのない状態になって縮んでしまうわけです。
姿勢を維持する筋肉は、深層筋(インナーマッスル)です。(以下で詳しく説明します。)
深層筋は、普段の生活ではなかなか鍛えることができない筋肉ですから、よほど意識してトレーニングをしないと、自然と衰えてしまいます。
最近では若い人でも筋力が弱く、正しい姿勢を保てない人が増えてきています。
運動不足や、デスクワークが増えたこと、子どもの頃にあまり体を使った遊びをしなかったため元々の筋力が弱い、などが原因と考えられます。
姿勢を良くするには?
猫背な子供に、背筋をちゃんと伸ばしなさい!と親が言っているのをよく聞きますね。
でも、子どもは好きで猫背になっているわけではないので、これは無理な話なのです。
試しに、姿勢が悪い(猫背の)
人に、背筋を伸ばして胸を張ってもらってください。
顔が上を向き、腰が反ってしまうはずです。
猫背の人は脊柱の湾曲が正しくないので、無理に胸を張っても、正しい形にはならないのです。
隠れ猫背
猫背体型の人が、無理に胸を前に突き出す姿勢をすると、腰を反らすことでバランスをとる形になります。
一見、良い姿勢に見えますが、脊柱の湾曲がより強くなるので、体にはとても悪い姿勢なのです。
骨盤は前に傾斜して反り腰になり、腰痛のリスクが増えます。
背中の湾曲がより強くなり、胸郭(肋骨)が詰まるので、呼吸が浅くなります。
また、無理やり胸を張っているので、背中の筋肉が常に緊張し、背筋痛や肩こり、首コリも起こります。
■正しい姿勢とは?
正しい姿勢のポイントは、腰が伸びて顎が引けているかどうかです。
顎を引くというのは、下を向くことではありません。
顔は正面を向いていて、横から見て顔が前に突き出ていない形です。
これが、脊柱の適度なカーブの上に、きちんと頭が乗っかっている状態なのです。
ヨガやダンスなどをやったことがある人はわかりやすいかと思いますが、
正しい姿勢をとる時、
「お腹をへこませ、お尻を締め、胸を持ち上げ、首を長く、顎を引き、頭のてっぺんを上に引っ張られているようなイメージで!」
と言われます。
全身を、重力に負けずに上に伸ばすように意識するんですね。
二重顎って…
顎を引くと二重顎になる人は、姿勢が悪い(首が前にでている)証拠です。普段からきちんと顎が引けている人は二重顎にはなりません。
二重顎は、太っている人に限ったものではなく、痩せている人にも多いのです。
姿勢が悪いと、首周りの代謝が悪くなり、むくんだり脂肪が付きやすくなります。
■姿勢をよくするには
姿勢を正すには、全身を整える必要があります。
次のような3ステップで身体を整えていきましょう。
- 身体の歪みを見極める
- 正しい形に戻す
- 正しい形をキープするように筋力をつける
【当院の施術】
当院では、体調が悪い人は姿勢が悪い という考えのもとで施術を行っています。
(体の不調は体の歪みから来ていて、その歪みは、体の一部分ではなく、全身に及んでいる。)
施術は、主に、手足の筋肉を刺激することによって、連動して全身を整えていきます。
どんな症状でも、最終的には、骨盤の歪みをとり、脊柱の生理的湾曲を正すように施術を進めていきます。
姿勢が悪い人(生理的湾曲が崩れている人)は、必ず骨盤が歪んでいますから、背骨の土台である骨盤を正すことがポイントなのです。
体が整っていくにつれて、肩こりや腰痛などが改善していきます。
- 人それぞれ歪み方が違いますから、それをしっかりと見極め、適切な刺激を与えていきます。
- 何度か施術を行っているうちに、体はだんだん自分の正しい形を覚えていきます。
※この段階で、歪みを整える体操のご指導をします。歪み方によって体操の種類や左右の順番が違いますから、必ず指導を受けてから行ってください。 - 身体が正しい形を覚えたら、その形を保つように筋肉を鍛えましょう。
姿勢が悪い子供
子どもは、筋肉が柔らかいので、姿勢が悪くても、痛みや体調不良が出ないことが多いです。
しかし、歪み(姿勢の悪さ)は、ほおっておいて治るものではありません。成長とともに、歪みがひどくなり、大人になってから、いろんなところに不調が出てきます。
上記にも書いた通り、子どものころから姿勢が悪いと、「生まれつき」とか、「遺伝だからしょうがない」と思われがちですが、そうではないし、何もしないでそのまま成長させるということは、治らない歪みを作っているようなものです。
当院では、子どもの患者さんがとても多いのですが、親が子どもの姿勢の悪さが気になって来院する場合がほとんどです。
本人に自覚症状は全くないのですが、歩き方がおかしい、身体が傾いている、身体が固い、などが見られます。
子どもは、まだ成長過程で全ての組織が柔軟です。歪みやすいのですが、逆に歪みも取りやすいのです。
ですから、できるだけ早いうちから体を正しく整えて、綺麗な身体で成長させてあげることが大切なんです。
お子さんの身体をしっかりと観察してあげてくださいね。
姿勢を維持する筋肉
姿勢を維持する主な筋肉をご紹介します。
■脊柱起立筋
脊柱の両脇に沿う筋肉です。重力に逆らって働くので、「抗重力筋」とも呼ばれます。

■腸腰筋
骨盤を安定させる筋肉です。

■太ももの筋肉(大腿四頭筋)
姿勢筋というと、上半身の筋肉が注目されがちですが、骨盤を安定させるには下肢の筋肉も必要です。
姿勢維持(保持)筋を鍛えるには
こちらで紹介する体操は、一般的なものです。(当院で指導する歪みを正す体操ではありません。)
身体を整えた上で、体操を行うのが理想です。
■深層筋(インナーマッスル)を意識したトレーニング
ダイアゴナル
(脊柱起立筋、広背筋、大殿筋、ハムストリングスに効果あり)

- 四つん這いになります。
- 腕は肩幅で、手首が肩の真下に来るように。
- 膝は直角に、骨盤幅に開く。
- 左手と右足をあげます。この時、骨盤が斜めにならないように。
- バランスを取りながら、5秒キープ。
- 左右1セットで、3回を目安に。
肘立てプランク
(脊柱起立筋、腹斜筋、腹直筋、大殿筋に効果あり)

- うつぶせになって肘を立てます。肘は肩の真下に来るように。
- 脚は、骨盤幅に開き、つま先を立てます。
- お腹を浮かし、体が一直線になるように。
- このまま 5~10秒キープ。
- 3セットを目安に。
ヒップリフト
(脊柱起立筋、大殿筋、ハムストリングスに効果あり)

- 仰向けに寝て、膝を立てます。膝と膝の間はこぶし1個分開けます。
- 腕は、体の横に自然に置きます。
- お尻を上げて、体が一直線になるように。
- このまま、5~10秒キープ。
- 3セットを目安に。
お尻歩き
(骨盤を整える効果あり)

- 足を延ばして座ります。(この姿勢ができない人は行わない事。)
- 手は、力が入らないように、掌を上にして太ももの上に乗せます。
- お尻を動かして前に2mほど進みます。膝は曲げないように。上半身で反動をつけないように。
- 二本のレールの上を動いているようなイメージで。斜めに進まないように。
- 進んだ分、戻ります。同じ距離だけ戻りましょう。
- 進んで戻って1セットです。進んだだけ、下がっただけでは逆効果になってしまうので、最初は距離を短めに行いましょう。
普段心がける事
姿勢に気を付ける(骨盤の傾斜を意識する)
- 椅子に座るときは深く腰掛ける。浅く腰掛けて背中を丸める姿勢は、骨盤を後傾させ、猫背を助長します。
- うつ伏せで肘を立ててゲームをしたり本を読んだりしない。骨盤が前傾し、隠れ猫背の体型になります。
- 柔らかすぎるソファーも骨盤にはよくありません。ちょっとくつろいでいると腰や背中が痛くなるソファーは要注意です。
- 仕事や勉強をする時の椅子とテーブル、パソコンの高さを調整する。
- パソコンやゲーム機を膝に乗せてやらない。
同じ姿勢を続けない
- ゲーム、スマホなど、長時間続けない。
- パソコン作業は、こまめに休憩をとる。
- 休憩中に軽く体を動かす。手を大きく振って歩く(足踏みでもOK)などおススメ。
体を動かす
- 普段からこまめに体を動かすように心がける。通勤の時になるべく歩くようにしたり、家事をしっかりやるだけでもかなりの運動量になりますよ。
- 姿勢に気を付けながら運動をすると効果的。
- 全身運動を、できるだけ大きな動きで行うと良い。ラジオ体操もおススメ。
- 細く、長く運動を続けるのがコツ。急にガッツリやってすぐに飽きてしまうのは最悪。
自分の姿を知る
- 全身が映る鏡を設置して、毎日見る。
- 写真やビデオなどで普段の姿をチェックする。
