チック(トゥーレット症候群)
チック症(トゥーレット症候群)とは?
自分の意思とは関係なく、体の一部が動いたり、声を発したりする症状を、チック症と言います。
チック症には、まばたきや首かしげなど、動きに関する運動性チックと、咳払いやうなり声を上げるなどの音声チックがあります。
7歳から14歳ころに発症することが多く、女児よりも男児に多く発症します。
一過性で自然と治るものがほとんどですが、まれに慢性化し、大人になっても治らない例もあります。
チック症を経験する子供は、10人に1人と言われており、とても身近な症状です。
クセ? それとも、チック症?
頻繁に瞬きをしたり、目をぎゅっとつぶったりする。
首をかしげたり、回したりする。
このようなクセは子供に良く見られることですが、それが数ヶ月にわたって治らなかったり、ひどくなったり、一つのクセが治ったと思ったら、違うクセが出てきたりする場合は、チック症かもしれません。
クセとチックの違いは、自分の意思でやめることが出来るかどうかです。
クセは、我慢して止めることが出来ますが、チックは自分の意思とは無関係に体が動いてしまうので、自分では止めることができませんし、気にすると余計ひどくなることが多いです。
また、一時我慢できても、その反動で逆にひどくなる場合があり、よくあるのが、人前では出来るだけ抑えていて、家に帰るとひどい症状が出るなどです。
トゥレット症候群
運動チックと音声チックの両方の症状があり、それが一年以上続く場合は、トゥレット症候群となります。
いろいろな種類のチック発作が出たり消えたりを繰り返します。
〔例〕瞬きが治ったと思ったら、首を回すクセがでてきた。鼻を鳴らすクセが治ったら、うなり声を出すクセが出てきた。など。
10代前半まで症状が悪化し、10代後半に軽くなる場合が多いですが、成人しても症状が残ることがあります。
症状と原因
主な症状
チックの症状は、大きく2つに分けられます。
運動性チック
- 顔面 … 瞬き、口をすぼめる、唇をなめる、眉間にしわを寄せる など
- 頸部 … 首をかしげる、首を振る、首を回す など
- 肩 … 肩をピクッとさせる、肩をすぼめる など
- 腕 … 手をピクッとさせる、手を振る、腕をくねらせる など
- 足 … 足踏みをする、蹴る動作をする、スキップをする など
- 体 … 体をねじる、体を反らせる、体を揺する など
音声チック
- 咳払い、鼻をならす、うなる、ため息をつく など
- 汚言を繰り返す … バカ、死ね など
また、10歳以降に現れるチック症状として、
匂いをかぐ、人や物に触る・叩く、表情をいろいろ変える、他人の言った言葉を繰り返したり、ある文章を繰り返し唱えたりする
などの複雑な症状もあります。
チック症状がひどいと、日常生活に支障を来たすようになります。
首の動きが止まらず、食事や歯磨きなどが上手く出来なかったり、手の動きが止まらずに、文字が書けなかったり、勉強に集中できなくなります。
対人関係において、消極的になってしまう場合も多いです。
また、同じ動きを繰り返すために、筋肉が疲労して、背中が痛くなったり、腰痛が出たりすることもあります。
主な原因
原因は不明ですが、脳の神経系の異常で、遺伝的要因もあると言われています。
以前は、親子のコミュニケーション不足や、しつけが厳しすぎるなど、育て方に問題があるなどと言われていましたが、現在では否定されています。
先天性の神経系の異常に、ストレスが重なると発症するとされ、ストレスが増えるとチックの症状が悪化します。
また、何か体の異常などがきっかけでチック症状が引き起こされることもあります。
例えば、結膜炎などで目をしばしばする癖がつき、結膜炎が治っても瞬きのクセだけ残ってしまったり、鼻炎が引き金で、鼻を鳴らすクセが治らない。などです。
左利きを強引に矯正したため、身体的、精神的ストレスが引き金になってチックが発症することもあると言われています。
脳神経系の異常が原因の類似している症状として、強迫性障害や注意欠陥・多動性障害(ADHA)などがあり、チック症と併発する場合も多いです。
また、睡眠障害、学習障害、抑うつ傾向、自閉傾向などがみられることもあります。
当院の療法
チック症は、
きちんとした原因が不明なので、完治することは難しいです。
しかし、ストレスと関係があることは確かですので、本人にとってのストレスが何かを見極め、軽減していくことが大切だと考えます。
身体のストレスを減らす
落ち着きが無く、常に体動かしている子どもがいますが、その子の身体を診ると、必ず歪みがあります。
身体の居心地が悪いので、動かずにはいられないのです。
首や肩が凝っているのが気になって動かしている場合も多いです。
子どもは、自分の肩の違和感を、「肩が凝った」とは表現しませんが、症状は大人の肩こりと一緒です。肩が凝ると、肩を上げたり下げたり、首を回したくなりますね。
それが慢性的にあると、動かすのがクセになり、場合によってはチック発症のきっかけになってしまうこともあります。
まずは、歪みを治し、身体のストレスを減らしてあげましょう。
肩こりが治れば、肩を動かすクセも治ってきます。
体調がよくなれば、精神的なストレスも減っていきます。
真っ直ぐできるかチェックしましょう
正面を向いて、しばらくじっとしてるように立たせます。普通に出来るのが当たり前だと思いがちですが、これができない子供が多いです。
座った姿勢でも同じく、正面を向いてじっと座っていられるかチェックしましょう。
- 体が斜めをむいてしまう
- 首が真っ直ぐにならない
- じっとしていられずに体をすぐに動かしてしまう
写真を撮るときに、首の向きや肩の高さを直されたり、なかなかポーズが決まらないことはありませんか?
チック症の子供は、首がいつも動いていて安定せず、座っている時には、無意識に頬杖をついていることが多いようです。
また、小さい頃に、骨折・捻挫などの大きな怪我をしたことがある子供は、体が大きく歪んでいます。
骨折すると、骨の周りの筋肉や神経も傷つきます。骨が再生されても、筋肉のバランスが崩れたままだと、体は歪んでしまうのです。
特に、手首・肘の怪我は、首の歪みにつながります。チック症の子どもは、首の歪みがひどい場合が多いです。
チック症の子どもの歪み
- 体の中心からアゴがずれている。
- 歯の噛み合わせが悪い。(歯を食いしばると首が傾く)
- 首が前に付き出ている。(ストレートネック)
- 目の大きさが違う。
- 顔の筋肉が緊張している。(歪んでいる)
- うつ伏せになったときに肩甲骨の高さが違う。
- 仰向けになったときに、左右の足の開き方が違う。
※からだのゆがみをチェックしてみよう
※骨折のページもご覧下さい。
対処法
チック症は、自分の意思とは関係なく、体が動いたり声が出てしまう病気です。
本人も気になっているのに止められないのです。
学校などで、からかわれることも多く、本当につらい思いをしていることでしょう。
ですから、「やめなさい」と言うのは、本人にとって非常にストレスになることで、逆に症状が悪化してしまいます。
不安感が強かったり緊張すると、症状がひどくなるというのは、 チックをすることによって、心のバランスをとっているとも言えるのです。
逆に叱ってはいけないからと優しくしすぎのも良くありません。
また、チックであることを本人に隠している親御さんが多いですが、これは逆効果だと思います。
どうして自分がへんな動きをしてしまうのか、本人は相当気にしているはずです。親が何も言わないことが逆に言ってはいけない、触れてはいけないことのように感じて、一人で悩んでいることでしょう。
ですから、きちんとチックについて説明して、本人も、周りの人も、無理に症状を抑えようと考えず、できるだけストレスの少ない生活が出来るように心がけましょう。
きちんと理解することが大切
チック症には、周りの人達の理解と協力が不可欠です。
まずは、保護者の方がきちんとした知識を持ち、本人にはもちろん、学校やお友達にもしっかり説明し、理解を求めましょう。
多くの場合は、10歳過ぎにだんだんと症状がなくなっていきますし、きちんと治療をすることで症状を軽くすることができますので、あまり神経質に考えすぎないようにしましょう。
また、何かに熱中している間は症状が出ないことが多いので、興味のあることは進んでやるようにすると良いと思います。